こころが走り出し、どうにもペンが追いつかない時も、
どうしよう、どうしたらいいと日記に書きつづる時も。
ニュースの代わりに、音楽をつける。
窓を開け、今日もいい天気だと思う。
部屋の観葉植物に水をやり、
冷たいコーヒー牛乳をいれて、パンを焼く。
仕事をする。パソコンに向かう。
昼になったら、公園で休憩する。
電話をかける。資料を読む。
話す。書く。考える。
買い物をしてから家に帰る。
牛乳。たまご。桃。トマト。
今日はなんにしようと思いながら
石けんで手を洗う。
しょうゆ。酢。みりん。酒。
いったい、この1ヶ月でどれだけ長く、
わたしは台所に立ったのだろう。
火の前で鍋をかきまぜながら、
わたしはなにを思い浮かべたのだろう。
料理をすることに、
ものを食べることに、
働くことに、
朝、起きることに、
ベンチでひと休みすることに、
駅で電車を1本見送ることに、
夜空を見るたび、もうすぐ満月だと思うことに、
笑ったり泣いたりすることに、
ときには怒ったりすることに、
音楽に合わせて口ずさむことに、
どうしようもなく、不意にせつなくなることに、
そのせつなさに、負けそうになることに、
なんの理由も理屈も、説明もいらないのだろうか。
それでも、もてあます感情はどこに片付けたらいいのだろうか。
いまはまだ、すべてがおぼろげだとしても、
失いたくない、
この気持ちだけ、伝わればいい。