アジアとアジアの飯をこよなく愛するライターの、「旅」と「パン」と「おいしいもの」があれば幸せな毎日の記録です。
by asian_hiro
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ameen's ovenのデュカ
シナイ半島からバスに揺られてカイロへ…と思ったら、
道の途中で、「ここから先は、勝手に行け」と下ろされた。
なんだよ! インチキじゃないか、コンチクショーって
バスの運転手とケンカして、いつもの調子でエジプト旅行が始まった。

最初に到着した宿は薄暗くてカビ臭く、
とてもじゃないけど、こんなところには長居できないと、
居心地のいい宿を探して、四苦八苦。
偶然、見つけた宿は8階建ての最上階。
ボコボコと屋上に掘っ立て小屋を並べたような、
いい加減な造りのもので、
オンボロエレベーターは、3回に1回は壊れるし、
なかに閉じ込められて
「ヘルプミー!」って叫ぶことも多かったけれど、
それでも、日当たりはいいし、洗濯物は10分で乾くし、
なにより、宿のおっちゃんと兄ちゃんたちが
すこぶるいい人たちだったから
あっという間にお気に入りのマイハウスになっちゃって、
気がついたら、1ヶ月も2ヶ月も過ごしていた。

朝は、近所のグロッサリーでサンドイッチをテイクアウト。
なすと豆のペーストを挟んだものが定番で、
宿に帰り、厨房のおっちゃんにシャイを頼む。
小さなしずく型のガラス容器に入ったアツアツの紅茶は
そのままでは渋いので、角砂糖をひとつ、ふたつ。
最後まで溶けず、
沈殿したものをデザート代わりにスプーンで食べるのも
食後の小さなたのしみだった。
いつもサンダルをずるずると引きずるように歩く厨房のおっちゃんは、
起きてから寝るまで、ずっと白い帽子を被っていて、
お祈りの時間になると、キッチンにじゅうたんを敷いて座り込む。
町のあちこちのスピーカーから、
まるで津波のようにアザーンが響き渡るなか
目を閉じるおっちゃんを、遠くから見るのが好きだった。

その宿を離れ、砂漠にも行ったし、スーダンとの国境近くにも行った。
オアシス、熱風、なつめやし。
目を閉じれば、まだまだハッキリとその景色を思い出せるよ。
もう、8年も前のことなのに。

エジプトを発つ日の前夜、
とてもとても、大好きなひとたちの結婚パーティに招待された。
いや、なんてことはない、
いつもの宿の屋上で、飲めや歌えのドンチャン騒ぎだったんだけど
それでも、ウエディングドレスを着た友人は
誰にも負けないくらい美しかったし、
普段は、ヘタなジョークしか言わないエジプシャンの友人も
キリッとした表情がかっこよかった。
屋根に上って、みんなの様子を見下ろしながら
このひとたちともお別れなのだ、
この宿ともお別れなのだ、
この匂いとも、この音楽とも、この月夜とも、
みんな、今日でお別れなのだと、
ひとつずつ、思い出を手繰り寄せてはサヨナラをした。
悲しいことは、とことん悲しんでこそ、
キレイさっぱり消化できるのだ。
中途半端に忘れようとするから、
ゾンビみたいに何度でも復活するのだ。
そう思い、たくさんのものとのお別れを
飽きて、もういいって思えるまで、延々と繰り返した。
月は、いつまでも丸かった。
風は、いつまでも生ぬるく、甘い香りが混じっていた。
ameen\'s ovenのデュカ_c0001023_15543831.jpg


そんな景色を思い出させた、
ameen's ovenのデュカ。
エジプトでもおなじみのミックススパイスを練りこんだパンを
もくもくと食べながら、
あたまのスクリーンに映し出されたさまざまな光景を
淡々と、ひとり、眺めていた。
by asian_hiro | 2007-07-22 16:11 | パンSPECIAL!!
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