甘い記憶と、苦みの現実。
北インドと南インドでは、チャイの味がまったく違う。
北ではしょうがやカルダモンなどのスパイスをいれるが、
南ではほとんど使わず、そのかわり牛乳の質が違うのか、
北よりもっとまろやかで、こくのあるミルクティーといった味わいだ。
(ちなみに、
こういう技が見られるのは南インドだけ)
そして、北ではあまりコーヒーを飲まないけれど、
南ではチャイと同じくらい日常的な飲み物で、
チャイ同様、たっぷりの砂糖と牛乳を入れて甘くする。
通りの片隅で、ひっそり営業するチャイ屋で飲むのもいいけれど、
なによりわたしが好きなのは、夜行列車で飲むチャイやコーヒー。
埃くさい寝台車のベッドに横たわり、
早朝、やかんとカップを手に持って、
「チャイーチャイー」「コヒーコヒー」と
売り歩くおじさんの声で目を覚ます、
その瞬間がインドの旅でベスト3に入るくらい大好きだ。
とはいえ、日本で飲むコーヒーはブラックがほとんど。
昨日、コーヒー豆を買うために
1988 CAFE SHOZOへ行ってきた。
場所が変わればコーヒーの好みも変わる。
砂糖と牛乳をたっぷり混ぜた南インド式のコーヒーは
舌先の記憶に、かろうじて残るだけ。