アジアとアジアの飯をこよなく愛するライターの、「旅」と「パン」と「おいしいもの」があれば幸せな毎日の記録です。
by asian_hiro
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バングラさん
ニューヨークの街角で見る、南国の青空。
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いつも歩く道に、果物の屋台がある。
ひとめでインド系とわかるおじさんとおばさんが店番をしていて、
りんごやぶどうや洋梨や、なぜかトマトやにんじんまで売っている
小さな移動式の屋台だ。
初めてその店の前を通ったとき、
おばさんがパンジャビドレスみたいな民族衣装を着ていたので、
それはどこで買ったのと英語で尋ねたら、
彼女は辿々しい言葉で、自分で作ったと返事をした。
そうか、英語が苦手なのね、
では、今こそヒンディ語を話すチャンスと、張り切って話しかけると、
首を横に振って、自分たちはバングラデシュから来た、と言った。
それ以来、わたしは彼らを「バングラさん」と呼ぶようになった。

バングラさん夫婦は、朝は旦那さんが屋台に立ち、
夕方、店じまいをする前に奥さんがやって来る。
そして、ふたりで売れ残った果物を片付け終わったころ、
彼らの息子だろうか、若い男性がやってきて、
空になった屋台を押し、坂道を上っていく。
確かめたことはないが、きっと、道の上には車が止まっていて、
屋台をつないで家へ帰っていくのだと思う。

バングラご主人は、雪や台風の日を除いて
いつも、道の角に立っている。
わたしはそこで、桃やりんごや洋梨を買う。
もともとあまり愛想のいい方じゃない彼は、
朝の早い時間帯は普段以上に不機嫌だ。
挨拶しても、お金を渡しても、
うんともすんとも言わないことがある。
最初の頃は、あれ、なにか悪いことしたかな、と
こっちが不安になるくらいだったけれど、
このごろはもう慣れてしまったので
まあ、いつものことだとあっさり流すようになった。

今日、店に立っていたのは、旦那さんでも奥さんでもなく、
バングラさんの息子だった。
旦那さんじゃないんだ、珍しいなと思ったとき、
ふと、ぶどうの入ったビニール袋が目についた。
房から外れてしまった半端のぶどうを集めて袋に詰めたもので、
1ドルという値札が立っている。
それ自体はいつも屋台に並んでいるものだから
取り立てて珍しいものではないんだけど、
そのなかに、巨大な袋が混ざっていたのだ。
「これも1ドル?」と、その袋を指差して彼に尋ねると
ちらりと見ただけで、「そう、1ドル」と返事をした。
「えー、本当に? こんなに大きいのに?」ともう一度聞くと、
彼もその大きさにようやく気がついたようで、
パッと手に取り、はかりに乗せた。
そして、周囲のひとがみんな振り返るくらいの大きな声で、
「1キロもある! いつもの2倍以上だ」と笑った。
「でも、それも1ドルなんだよね?」とわたしが冷やかし気味に言うと
「いや、これはいつもの2倍だから2ドルだね」と、バングラ息子。
そうか、それならいいや、どうせこれじゃ多すぎるし、
ちょっと聞いてみただけだから、と屋台を離れようとしたら、
「おいおい」と、わたしに向かって呼びかける。
「これ、こんなに多いんだから2ドルでもいいじゃないか」
「うーん、でもそれじゃちょっと多すぎるんだよね」
「じゃ、仕方ないな、もう1袋買ったら全部で2ドルにするよ」と
彼は、ますます大声で笑いながら言った。
このビッグサイズのほかに、さらにもう1袋買ったら
合計で、いったい何キロになるのかわからなかったけれど、
彼のおおらかな笑い声がとても気持ちよく響いたので、
はい、と財布から1ドル札を2枚取って渡した。

ひとと値段の話をして食べものを買ったのは久しぶりだ。
ひとの豪快な笑い声に、行動を促されたのも久しぶりだ。
どうして、あの無愛想なバングラご主人から
南国の青空みたいにスコンと突き抜けた息子が育ったのか不明だけど、
きっと、(人のことは言えないけれど)仏頂面のバングラご主人にも、
そして、「歩くときは3歩下がり、決して亭主の影踏まず」みたいな
おとなしいバングラ奥さんにも、
同じような一面があるのかもしれない。
あしたは誰が屋台に立っているのかわからないけれど、
わたしは、バングラ親子の青空をもっとよく知りたいから、
いつもの通り1ドル札を用意して、あの屋台へ向かおうと思う。
by asian_hiro | 2008-06-20 10:30 | ニューヨーク生活・日々 | Comments(6)
Commented by hearty at 2008-06-20 15:26 x
hiroさま
先週末、代々木で行われた初のバングラディシュフェスティバルに行ってきました。
初めてということでなんとものんびり。
一番人気、タイフェスの喧騒とは大違いでした。
バングラご主人、奥さん、、、、
もしかしたら故郷では、そんなスコンとした笑顔で暮らしてたのかな、ふとそう思いました。

ぶどうが光でキラキラ宝石のようです。
なんだか1ドル2ドルなんてもったいないぐらい☆
Commented by じじ at 2008-06-20 17:48 x
バングラさん、可愛いあだなですね。
まんまなれどナイスネーミング!

カラフルなぶどう詰め合わせ、1キロも入った袋が2ドルだなんて。
おまけまでついたなんて。
やりとりの楽しさも含めて、すんばらしいお買い物ですね!
いいなあ、私の住まい辺りは果物が高くって。。

hiroさんは、ビタミンぎっしりジューシーヘルシーボディなんだろうなー。
Commented by うう at 2008-06-20 22:38 x
いいなぁ~。うちの近くにもそういうお店あったらいいのに。絶対常連になりそう!
秋にバングラのお隣のインドへ行く計画があります。あたしは22年ぶり!中国のように激変はしてなさそうな気はするのですが・・・。hiroさんの本で予習します!マウイ在住の彼と行くので大阪に住むわたしとデリーで待ち合わせ。ちゃんと会えるかな?(笑)
Commented by asian_hiro at 2008-06-21 21:52
>heartyさん
わたしはバングラデシュフェスティバルに行ったことがないのですが、機会があったら来年、出かけてみたいと思います。
たくさんの青空みたいな笑顔に出会えそうです。
ぶどう、おいしいですよね。2回でこれだけの量を食べきってしまいました…。
Commented by asian_hiro at 2008-06-21 21:54
>じじさん
たしかにまんまなネーミングだけど、それしか思いつかなかったんだよね。語呂もいいし、そのままでいいかな、と思って。
じじさんのお家の方って果物が高い?
どこに住んでいるかによって、果物や野菜の値段って全然違うよね。
わたしの家の周りは幸い、安めなので安心して大量に買い込んでいます。
でも、果物には果糖が多いからねー、ビタミンぎっしり…なボディになれればいいのですが(笑)
Commented by asian_hiro at 2008-06-21 21:56
>ううさん
秋にインドですか、いいですね!
たぶん、いちばん良い季節ですね。どちらへ行くんですか?
デリーでは数年前、「牛禁止令」が出ましたが、3年前に行ったときはまだ、野良牛が健在でした。今もいるかな。
デリーで待ち合わせっていうのもいいですね。
海外で人と待ち合わせるわくわく感はわたしも大好きです。
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