アジアとアジアの飯をこよなく愛するライターの、「旅」と「パン」と「おいしいもの」があれば幸せな毎日の記録です。
by asian_hiro
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なすの味噌炒め
日曜の午後、泣きながら本を読んだ。
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とても懐かしいひとと、東京を歩いている夢を見た。
交わした言葉を寝ぼけた頭で反芻しながら
ベッドの中でうつらうつらとしていたら、
スカイプの着信音がいきなり鳴った。
急いで返事をすると、聴こえてきたのは日本の友人の声。
ああ、今日はつくづく日本に縁のある日だなあと思いつつ、
1時間ほど話をしてから、じゃあねと言って電話を切った。

空はどんより曇り空。
とりあえず、ランドリーと部屋の掃除を
同時進行でこなすことにした。
ランドリーは、家から徒歩1分のところにある。
一度、ランドリーへ行って洗濯機を回してから
部屋へ戻って掃除機をかけ、モップもかける。
それから、再びランドリーへ行って洗濯物を乾燥機に移してから、
家に帰ってトイレとバスルームとキッチンを掃除。
さらに全体にクィックルワイパーをかけて、総仕上げ。
こうしてランドリーへ戻ると
大体、洗濯物も乾いている。
この1時間あまりの戦争みたいな時間がないと
わたしの日曜日は始まらない。

ゆで卵とルッコラで簡単なサンドイッチを作ってから
ベッドでごろりと横になり、本を読んだ。
たまたまひとからもらったその小説は、
きっと、わたしなら選ばない作家のもの。
余命半年と宣告された48歳の男性が
その日を迎えるまでの、いろいろな物語だ。
この本を読み始めたときは
最期まで愛人のことを気にかけ、
とうとう、ホスピスで
妻と愛人を対峙させる彼の性格に納得がいかず、
どうも、感情を移入することができなかった。
だけど、なにかしらの矛盾を抱えてこそ、人生。
きっと、わたしがその立場だったとしても、
周りのひとには理解できない、複雑な心のあやに悩むのだろう。

読み進むたび、なみだがあふれて止まらなくなった。
息子にすき焼きの作り方を教えるシーン。
仲違いしていた実兄とホスピスでスイカを食べながら
「俺はまだ死にたくない」ともらすシーン。
高校生の娘が海辺でチアリーディングを披露するシーン。
これでは作者の思惑にどっぷりはまってしまう、と
ひねくれ者のわたしは泣くまい、泣くまいと思うのに、
いったん外れたねじは、もとに戻すのが難しい。
途中、何度か洗面所で顔を洗い、目と頭をすっきりさせてから
最後まで読み切った。
窓の外には、まだ灰色の空が広がっていた。

たんすからダウンコートを出して帽子をかぶり、部屋を出た。
なすを買いに行かなければ、と思ったのだ。
こっちへ来てから、何度かなすの味噌炒めを作ったものの、
どうも味が落ち着かない。
慣れ親しんだ母の味にならないのだ。
先日、母に作り方を尋ねるメールを送ったら、
「味噌大さじ3、豆板醤大さじ1…」と、細かく書かれた返事が来た。
いつも大雑把に料理をする母が
せっかく詳細に書いてくれたのだから、
その通りに作ってみようと思った。

となりの、となりの駅まで散歩がてら出かけ、
駅前の八百屋で大きななすを2つ買う。
途中、スーパーや靴屋や古着屋に寄りつつ、
じぐざぐに道を辿りながら家へ戻って来ると、
もう6時近くだった。
そのまま台所に立ち、買ってきたばかりのなすを切る。
メールで読んだ通り、
まずは、味噌と豆板醤とみりんを混ぜる。
それから、たっぷりの油で炒めたなすに
砂糖をふりかけてしんなりさせ、
合わせた調味料を一気にかける。
出来上がりは、かなりしょっぱくなってしまったが、
いつもより、記憶の味に近づいた。

だけど、わたしが母の味をそのまま再現することはできないのだろう。
母は、母の人生のすべてをかけて、あの味に辿り着いたのだから、
わたしは、わたしの人生のすべてをかけて、
わたしの味を作るしかない。
ガンで亡くなった48歳の彼が
息子に教えたすき焼きの味も、
きっと、そのまた息子へと受け継ぐ頃には
微妙に味の加減が変化しているにちがいない。
だけど、きっとそれでいいのだ。
誰かから手渡しで受け取ったものには、
そのひとだけが持つ、手の温度が加わるのだから。
だとしたら、わたしが誰かへ手渡すものは
いったい何だろうと、ふと、残酷な質問が頭に浮かんだ。
もし、わたしが「余命半年」と宣告されたら、
誰に、なにを渡したいと思うのだろう。

なすを炒めた中華鍋を黙々と洗いつつ、
自分自身に返答する。
渡したいものはなにか、など考える時点で
渡したいものが、わたしのなかに育っていない証拠なのだ。
でも、焦る必要はないし、そんなつもりもない。
未知の果物が熟すタイミングなど、誰も知りようがないのだし、
わたしにはまだ可能性がたくさん残されていると思えば、
それは焦りではなく、楽しみになる。
ただ、今度なすの味噌炒めを作るときは、
もう少し、味噌を少なめにしてみようと思った。
by asian_hiro | 2008-04-07 09:22 | ニューヨーク生活・日々 | Comments(12)
Commented by ぽっきー at 2008-04-08 03:26 x
hiroさん元気ですか?
ずいぶん、暖かくなりましたね。
四国の田舎は桜が散り始めました。

なにやら、切なくもおいしそうなお話ですね。
(何気ない一日の流れやら、サンドイッチやら。笑)
ナスの味噌炒め・・私も大好きです。
食べたくなりました。
でも、私が作るのもしょっぱくなりがちなんですよ。。

ずいぶん前に亡くなった
おばあちゃんの素朴な味のコロッケが大好きで
レシピを生前に教えてもらっておけばよかったと
今でもずーっと後悔してます。
いつか、似た味のコロッケが作れるようにいいのですが・・
Commented by hearty at 2008-04-08 17:16 x
hiroさま
私の母、、、、料理上手な人でした。

親元を出て早20年。
いつまでたっても母の味にはかないません。どんなに一生懸命作ってもそれはただ切干大根の煮ただけの物で、ただご飯を炊いただけの物です。

hiroさんの言葉で言うなら、私は人生かけてないのだと思います。
私は私の味を誰かに渡すことができるのだろうか?
その私の味って、どんなだろう。
そんなことぼんやり思いました。

Commented by のん at 2008-04-08 22:39 x
hiroさんは、充分渡してるじゃない?
ブログ。楽しみにしています。
Commented by asian_hiro at 2008-04-09 10:06
>ぽっきーさん
お久しぶりです。お元気ですか?
今日、たまたまあのパン屋さんとメールでお話ししたので
なんだか、シンクロしているようでうれしいです。
なすの味噌炒め、何気ない料理ですが
わたしも大好きです。
ごはんが何杯あっても足りないくらい(笑)
おばあちゃんのレシピ、いつか近づけるといいですね。
もしかしたら、もうおいしさでは
追い抜いているのかもしれないけれど、
「おいしい」という次元とは別のところで
いつも追いかけてしまう味ってありますよね。
Commented by asian_hiro at 2008-04-09 10:13
>heartyさん
切り干し大根が食べたいと思って、大根を千切りにし、
干したのです。
これをしょうゆとみりんで煮たら、あの味になるかなあと
思って。
本当はさつま揚げもいれたいところですが、
家の近所では売っていないので、チャイナタウンで
厚揚げを買って来ようと思っています。
なにげない、当たり前の料理って
実は一番のごちそうですよね。
Commented by asian_hiro at 2008-04-09 10:15
>のんさん
のんさんはいつもうれしい言葉をくれるよね。
どうもありがとう!
ピタくんは大きくなった?
いつ、家族旅行でニューヨークへ来るのかなーと
首を長くして待っているよ。
いつでもお守りは引き受けるので
ぜひ、遊びに来てね!
エッサといっしょに待っているよー。
Commented by az at 2008-04-09 22:53 x
hiroさん

いつも読ませて頂いてます。
おひさしぶりです

NYの空気の中、
日本では考えもしないような
いろいろな気づきがあるようで

ああ
人生を楽しんでいらっしゃるのだなぁ

と、感じます。

作りたい母の味。
ありますね。

でも、やっぱり母の手で作られるものだから美味しいんだなぁって
一人暮らしを初めてしみじみ思います。


私も来月、旅に出ます。
そう考えるだけでときめいて、幸せな気分になってます。

体には気をつけて下さいネ。
Commented by asian_hiro at 2008-04-10 11:06
>azさん
コメント、ありがとうございます。
人生を楽しんでいるのか、いないのか?
どうなんでしょうね、
日々、あれこれ小さいことに
つまずいてばかりですが、
たくさんのひとに励まされ、
なんとか元気にがんばっています。
どこへ旅に出るのでしょう。
どこへ行っても、良い旅になりますように!
お気をつけて行ってらっしゃい!
Commented by tabijitaku at 2008-04-11 07:27
「明日の素、味の素」というコピーのCMがあります。ときどき「私の素」と聞こえそうなときがあります。でもそれでもいいような気もします。
Commented by asian_hiro at 2008-04-11 10:29
>tabijitakuさん
わかる! 
わたしも、「わたしの素」と聞こえそうなときが
あります。
もしかしたら、そう聞こえて欲しいのかもしれません。
tabijitakuさんの「わたしの素」はなんですか。
わたしの「わたしの素」は、メールと音楽とパンとコーヒーと
太陽と満月と川と…って、多過ぎです(笑)
Commented by tabijitaku at 2008-04-12 17:14
tabijitakuさんは「わたしの素」と誤読して椅子から転げ落ちそうになりました。わたしは、わたしの素を1973枚の写真と、そこに添えた言葉で表現してみようと思いました。いまの日々の記事はその欠片です。何年かかかる計算ですが、終わったら画像をつないで好きな音楽を添えてDVDにします。映画1本分ぐらいの長さになる計算です。
Commented by asian_hiro at 2008-04-13 07:03
>tabijitakuさん
あはは、朝から笑わせていただきました!
でもある意味では、このブログも、ここにコメントをくださる
方々も、すべてが「わたしの素」だと思うので
あながち冗談ではありませんね。
1973枚の写真が綴られたDVD、
わたしまでなんだか楽しみになってきました。
どんな音楽を添えようか、考えるだけで
ワクワクしますね!
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