旅と日常のつなぎめなど、スキップで飛び越せる。
中国にいたとき、「小姐」と呼ばれるのが好きだった。
そのたびに、なんだか自分が粋な女になった気がして、
まあ、それは単なる気のせいだったとしても、
「シャオチエ」
そう、声をかけられると、
つんと、あごを上げたくなった。
今日、電車のなかで
「小姐」と、話しかけてくれたチャイニーズのおばちゃん。
ごめんね、
わたしは本物の「シャオチエ」ではないけれど、
ひさしぶりに、そう呼んでくれてうれしかったよ。
どこにいようとも、なにをしようとも、
旅のかけらは、あちこちに落ちているのだと思った。
ボストンで買って来た
Bruegger'sのベーグルは
ローズマリーとオリーブオイルが入ったもの。
頬にガラスの破片が刺さるみたいだったあの町の空気を思い出しながら
ぼこぼこと音を立てるラジエーターのそばで
ひとり、ほおばる。