アジアとアジアの飯をこよなく愛するライターの、「旅」と「パン」と「おいしいもの」があれば幸せな毎日の記録です。
by asian_hiro
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夜のジョギング
走ることは、何かを振り捨てることだと思っていた。
だけど本当は、何かをひとつずつ拾い上げる行為なんだとわかった。
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駅地下のトイレで着替え、コインロッカーに荷物を預けた。
スニーカーの紐を結び、よし、と気合を入れて地上に出る。
澄んだ夜気が、腕と頬に心地よかった。

そろそろと走り始める。
なんでも最初が肝心なのだ。
ここでスピードを控えては、この先、ペースが上がらない。
かといって、いきなり全力疾走してしまうのもためらわれる。
なんたって、皇居の周りは約5キロ。
決して長いとはいえないが、運動不足の身には堪える距離だ。

丸の内のビル群を右手に見ながら、徐々にペースを上げていく。
誰かの気配を感じたと思ったら、あっという間に抜かされた。
20歳くらいの女性だろうか。
よし、今日はこの人についていこうと覚悟を決めた。

耳に突っ込んだi-Podから、テンポのいいアジアンポップスが流れてくる。
初めてこの曲を聴いたのは、南インドの茶屋だった。
夜の景色は、いつでも旅へとつながっていく。
ぽつんと見える向こうの灯りはチャイ屋だろうか。
いや、そんなはずはない、ここは東京。丸の内だ。
私が今日帰るのは、どこの宿だ。ドミトリーか、テラス付きのシングルか。
いや、6畳の見慣れた部屋だ。本棚とタンスとパソコンがあるはずだ。
旅。東京。旅。東京。
すべてがグルグルとかき混ざる。
グルグルグルグルかき混ぜて。そんな遊び歌があったっけ。
近所の女の子たちとゴムだんをして遊んだのはミャンマーだ。
牛乳一本用意して。グルグルグルグルかき混ぜて。
出来上がるのは、森永のババロアだ。

それにしても足が重い。
「この人についていこう」と決めた彼女は、とうの昔に見えなくなった。
わずかながら、道が上昇している。坂なのだ。
もう少し。
ここを越えれば、たしか平地だ。見晴らしのいい場所に出るはずだ。
この間、走ったのは土曜の昼間。
きらきら光をはね返すお堀の様子に、一瞬、足が止まりそうになったのだ。
これが夜ならどんなに。どんなに、なんだ?
何の前兆もなく、不意に視界が広がった。
黒い水。黒い空。闇。静寂。
ああ、そうだ。
わたしはこの景色を見たいがために、走っていたのだ。
ああ、そうだ。
わたしはこの景色を見たいがために、旅に出たのだ。
そんなことを思ったのは、バリの田園。
1年半もの長旅を終え、最後に見たのがウブドの棚田で、「これでようやく旅を終えられる、日本に帰れる」ってホッとした。
そういえばなぜ、「帰れる」なんて思ったんだろう。
田んぼ、稲、米、日本。
すべての答えは、そのなかにあったのだろうか。

長い長い、坂道を下る。
イヤフォンから軽快な音楽が流れて来た。
ペースが上がる。手の振りが大きくなる。
なにも、スピードを上げようと考える必要はないのだ。足が身体を運んでくれる。
走る。走る。バスが過ぎる。皆がこっちを見ている気がする。わたしは走る。
左手には相変わらず闇とお堀。
右手には、もうすぐ東京タワーが見えるだろう。
首を回す。赤と白の三角形を探す。でも見えない。まだなのか。
目の前には丸の内。
お堀を四分の三ほど走っただろうか。あと少しで出発点へ辿り着く。
帰ってきた。帰ってきた。
イエメンのサナアにバスが着いたときも、そんなことを思っていた。
国をぐるりと一周しようと出発し、
ようやく定員になった乗り合いバスが動き始めたと思った途端、
検問中のポリスに、外国人の女一人旅だからと、荷物ともども降ろされた。
それなら別ルートで行ってやると意気込んで、
なんとか目的地に着いたはいいが、今度は「ノールーム」と宿泊拒否。
やっとのことで見つけた宿は7階建ての最上階。もちろん階段。
ちきしょう、ちきしょうって何度もぼやきながら、
必死の思いで旅を終え、2週間ぶりに戻ってきた首都のサナア。
帰ってきた。帰ってきた。
やっぱりこの町がわたしは好きだ。
何千年と変わらない、幸福のアラビア。連綿と続く歴史。
マッチ箱を立てたように、背の高いビルがにょきにょき並ぶ奇跡の町。
いま、目の前に広がるのは、コンクリートのビルの群れ。
右手に東京タワーが見えてきた。
首を大きく傾けて、赤と白の三角形を覗き込む。
たしか、12時の時報に合わせて消灯するのだ。
昔、このあたりでその瞬間を待ち受けたことがあったような。

走る。走る。
スタート地点まで、あとわずか。そう思ったら、足が一気に速まった。
なんだ、わたしのなかにはまだこんなにエネルギーが残っていたのか。
出し惜しみするのは、昔からの悪い癖だ、そういえば。
仕事でも。遊びでも。恋愛でも、なにもかも。
そしてゴール。
なぜだかもったいないような気持ちもするが、もう、足を止めてもいいのだ。
走らずともいいのだ。
歩みを遅め、大きく腕を回して深呼吸をひとつ、ふたつ。
遠くに光る地下鉄の表示を目指し、のっそりと歩いていく。
ついさっきまで、浮きつ沈みつを繰り返したたくさんの幻想が、引き潮みたいに遠ざかる。
ひとり、ふたりと乗客を乗せたタクシーも、まばたきする間に闇へ溶けた。


走ることは、何かを手放し、身を軽くすることだと思っていた。
だけど本当は、封印したはずの巨大な何かを、心に解き放つことだとわかった。
また今度、ここへ走りに来ようと思う。
by asian_hiro | 2007-05-19 01:00 | 日々のこと | Comments(14)
Commented by through_leaves at 2007-05-19 11:04
歩いたり、走ったりすることで入ってくる情報量は膨大ですね☆
最近はもっぱら車生活で不満です。
それにしてもアジアンポップスでジョギングとは?どんな感じなんでしょう。それぞれに小気味いい音楽ってありますよね、、、
>乗客を乗せたタクシーも、まばたきする間に闇へ溶けた
>そしてゴール。なぜだかもったいないような気持ちも・・
ゴールに着くとそれまでの感覚が足に残ってますね、、、
楽しく読ませていただくきました☆
追伸:ありがとう!本届きました!
Commented by t20t37c at 2007-05-19 11:09
私も去年よく走ってました。
旅に出る前、また行くことをちゃんと決める前。
でもその時は短距離をばーっと走ってましたが・・
「心に解き放つ」っていい言葉ですね。

その時の気持ちはその時ぶつけないと、
後からどんどんわからなくなっていくような気がします。
それもまた解き放つ練習のような・・
私もぐるぐるかき混ぜながら、
その気持ちをもっと表現できたらいいのにと思います。




Commented by gymshimaco at 2007-05-19 12:01
”生き別れのふたごかも” なhiroさん、私も走っていますよ。

走ることがくれる心と体への不思議な力とその魅力について、
常々、漠然と感じてはいましたが。
体は一生懸命走っているのに、頭の中では別のイメージが、
過去も未来も現在も、順不同でグルグル現れて消えたりして。
心の整理をしようとしているのだか、単なるいつもの考えごとか・・・。

せわしない社会の中にいながら、長中距離を走れる時間を作るって、
考えてみれば貴重で贅沢なのかもしれません。
目標達成してゴールした時の爽快さと快感も、たまりませんしね。

さてさて、hiroさんの5kmランの最中の思い出のショートトリップ、
疑似体験させていただきました。ちょっとドキドキしました。
Commented by hi-vison_1103 at 2007-05-19 16:15
疲労感なのに、こういうときのってどうして「心地良い疲労感」になるんでしょうね。
文字なのにあ〜〜気持ちいい(^ー^)って感じ♪byクロエ@スピードな無いがうろごそ
Commented by hirune-ya at 2007-05-19 21:24
ひるねやaiaiです。
私の場合は「走る」ではなくて「歩く」ですが
眼に映る全てが、身体の細胞を刺激して
思い出させてくれたり、気付かせてくれたり・・。
好きなこと、夢中になることをしている最中って、
無駄なことを考えないで良くって、いい波長でいられて、
なんだろう。
自分のことをきちんと考えてあげられる、
自分と向き合える大切な時間なんだろうな、と。

Commented by ナオ at 2007-05-20 03:32 x
ちょうどいい走る距離を得るためにって言うのも理由で引っ越したので
走ることの文章の今日は、
・・・すごくびっくりしました。笑
足が体を運ぶって、走るときにいつも思うのです。
そしたら、自分の力でどこでもいけるんだなあって。いつも思うのです。
まあ、パンが燃費になってるけど。笑
走るの、きもちいいですよね!
Commented by asian_hiro at 2007-05-20 19:51
>through_leavesさん
わたしのi-Podに入っているのは20曲あまりなのですが、
そのうち半分がインド映画のサントラ。
そのほかは、ワールドミュージックと呼ばれるジャンルが多いでしょうか。
音楽を聴きながら走ったり、歩いたりする習慣が
これまでなかったのですが、ちょっとクセになりそうです。
(本、届いたみたいでなにより!)
Commented by asian_hiro at 2007-05-20 19:53
>t20t37cさん
今回のこの文章は、走っているときに浮かんできたものです。
この「グルグル感」を残したくて。
その気持ちに共感してくれる人がいたということだけでも、
書いてよかった!って、そう思います。
また今度走ったら、違う感情が出ると思うのですが
それもまた、大切に書き留めたいと思っています。
Commented by asian_hiro at 2007-05-20 19:55
>gymshimacoさん
ショートトリップを疑似体験してくれて、ありがとう。
そう言ってくれる人がいたらいいなと思っていたので
ホントにうれしいです。
走りながら、わたしを追い抜いていひとや、
(若干ながら)わたしが追い抜いてくひとは、
みんな、心の中で何を考えているんだろうと思うのです。
仕事のこと、週末の予定、将来のこと、恋愛のこと。
そうやって、グルグル考えるうちに、きっと大切なものだけが
残っていくのでしょうね。
Commented by asian_hiro at 2007-05-20 19:57
>hi-vison_1103さん
心地よい疲労感ってなんでしょうね?
単に「疲れた」という感情だけじゃなく、満足感とか達成感とかも
そのなかに含まれるのでしょうか。
わたしは昔から短距離が苦手で、その分、長距離だけは
がんばろうと思っていた生徒だったので、
久しぶりに、厳しかった体育の先生の顔も思い出しました。
こわかったなー、いつも竹刀を持って!
Commented by asian_hiro at 2007-05-20 20:01
>hirune-yaさん
無駄なことを考えなくていい、って、確かに貴重な時間ですよね。
とりあえず、足を動かすことだけ考えていればいいという。
そうやって余計なことがそぎ落とされ、
ものの本質だけが残っていくのでしょうね。
なんだか、書いていたらまた走りたくなりました!
明日も走ってしまいそうです。
Commented by asian_hiro at 2007-05-20 20:03
>ナオさん
「走る」というと、いつもナオさんを思い出しますよ。
スコーン、焼いているかなあとか。
あのパン屋さんへ行っているのかなあとか。
そのうち、ナオさんなら走ってわたしの家の近くまで来ちゃいそうだよね(笑)
自分の力だけでどこへでも行けるという感覚、共感!
なんて自由なんだろうって、それだけで嬉しくなっちゃうね。
Commented by macha04macha at 2007-05-22 23:52
こんばんは、ごぶさたしています。(^^ゞ
hiroさん相変わらずかっこいい!!
ホント!映画のワンシーン見てるよう…ステキ♡
「インド映画のサントラ」、私も聞いてみよぉーっっと♪♪
↓のミースルもなつかし~ぃ食べたい(>_<)
Commented by asian_hiro at 2007-05-23 00:01
>macha04machaさん
ご無沙汰しています! こんにちは。
映画のワンシーンみたい、というコメント、
とてもうれしいです。
インド映画のサントラには、(わたし的に)いろいろ当たり外れがあるので
1曲聴いて「こりゃダメだわ」と思っても、
あきらめず、いろいろチャレンジしてみてくださいね。
ネットでも、無料で聴けるサイトがたくさんあるので!
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