昨日、家に帰ったら宅急便が届いていた。
差出人は大学時代の友人。
先日、本当は一緒に飲みに行くはずだったのに、私の勝手でキャンセルさせてもらった人だ。
開けてみたら、PAULのパンが入っていた。
「コル・ドゥ18・プティ・パン・ポール」。
長さ30cm以上の大きなカンパーニュに18個のプチパンを詰めたもの。
以前、大勢の友人たちとみんなで分け合って食べたことがある。
まるで大きな真珠みたいに、中には様々な種類のリーンなパンが入っていた。
「パンのなかに入ったパンがあるの!」
まだPAULが出来て間もないころ、そう教えてくれたのは彼女だった。
私がパン好きであることを知っているから、おいしいパンを見つけたといっては教えてくれるし、ベーグル屋がオープンしたといってはメールをくれる。
大学を卒業して以来、彼女は結婚し、私は相変わらずの放浪生活で、学生の頃はほぼ毎日のように会って、飲み、語り、笑っていたのに、そんな機会もめっきりと減ってしまった。
先日は久しぶりに飲むはずだったけれど、どうしてもそんな気分になれない悲しいできごとがあって、申し訳ないけどわがままを言わせてもらったのだ。
ここ2週間ほど、正直言えばものすごく不調だった。
会社へ行ってもやる気がしない。パンを食べてもそれほどおいしいと感じない。
すべてが鈍って、ためしにやってみた「ストレス検査」では「エネルギー消失」「ストレスの解消がうまくいかない」「眼圧不安定」など書かれる始末。
イヤな涙もイヤなところでたくさん流した。
それをうすうす感じている彼女に、心配しないよう連絡をしなくちゃと思いつつ、ここ1週間は外出が多かったからメッセンジャーも立ち上げなかったし、メールもしないままだった。
だけど、今日。
こんなに大きなパンが届いてようやく、なんて私は悪いことをしてしまったんだろうと気がついた。
中には手紙が入っていた。
最初は読むのが怖かった。「大丈夫?」とか「元気出して」とか、そんな言葉が書いてあるのかと思ったから。
だけど、開いてみたら
「本の出版おめでとう。花より団子だと思ったから『団子』の方を送ります」とそこにはあった。
10日が発売日だとは言っていない。だけど知らない間にブログで見ていてくれたらしい。
うれしかった。涙が出た。
大学時代の4年間、一緒に過ごした懐かしい日々が急激に近寄ってきた。
この大きなパンは、私ひとりで食べようと思う。
ケチだろうとなんだろうと誰にもあげない。
こんなに切なくうれしい気持ちをくれた彼女のやさしさまで、ひとつ残らず味わって食べようと思う。
彼女の気持ちを運んできたPAULのパンは、いつもよりきっと少しだけおいしいだろう。