中国からスタートした旅は西へ、西へと進みトルコまで来た。
バスでイスタンブールへ到着したのは夜中の2時。
真っ黒い海を越え、橋の向こうにポツポツと明かりが見えてきたときは、眠気も忘れて鳥肌が立つ思いがした。
モスクの塔に灯る光。大きなカブトムシみたいなこんもりした丸い影が、小高い旧市街に点在していた。
翌朝、ガラタ橋へ行った。
ヨーロッパとアジアを分ける海峡にかかるその橋のたもとでは、たくさんの「サバサンド」屋台がある。
バゲットを割り、素焼きしたサバの半身とカットした玉ねぎ、トマトをいれただけのサバサンド。
テーブルに置いてあるレモンや塩を各自で勝手に振ってかぶりつく。
「アジアへ帰ろう」。そう思った。
海の向こうはヨーロッパ。私が今、立っている場所はアジアの一部。
その境目を眺めつつ、なつかしい脂のにじむサバのサンドを食べながら、私は自分の帰る場所を思い出した。
旅の記憶はいつもたべものとともにある。
そして、大切なこともたべものが教えてくれる。
イスタンブールの景色。
10月とは言え、雨も多くて寒かった。
でもこの町はノスタルジーであふれていて、ただ歩いているだけでさえ、西洋も東洋も、中東も日本も、キリスト教もイスラムも、いろんなものが味わえた。