アジアとアジアの飯をこよなく愛するライターの、「旅」と「パン」と「おいしいもの」があれば幸せな毎日の記録です。
by asian_hiro
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インド・アフター・インド
おしらせです。
インド・アフター・インド_c0001023_1938267.jpg

インドの本を書きました。
写真半分、文章半分の、エッセイ風旅行記のような感じ。
この本を通して、インドの空気を感じてもらえたらうれしいです。

「インド・アフター・インド」
花伝社

現在、amazonや書店で発売中。
→amazonのページ http://goo.gl/8mJxB


<インド・アフター・インドを書いて思うこと>
はじめてバッグパックを背負って旅をしたのは、1997年のことだった。
行き先はインドで、2週間。
バッグパックは新品のL.L.Bean、
深い緑色のもので、容量は40リットルだった。

その2年後、約半年に及ぶ旅に出た。
タイからはじまり、インド、ネパール、ヨルダン、エジプト、
それからタイへ帰ってくるというもので、
まだ、長旅に慣れていなかったため、
あれもこれもバッグパックに詰め込んだら
みっともないくらいパンパンになってしまい、
スタート地点のバンコクのカオサンロードで、
L.L.Beanのバッグパックを売り、60リットルのLowe alpineを買った。
黒地に赤で模様が入っている。
もちろん、バッタものだ。

まだ、デジカメなどなかった時代だ。
バッグパックの1/3はフィルムが占めた。
帰国する頃にはあちこちで購入した洋服や布、
本、食べ物類などが加わり、
最後は20キロ近い重さになった。

そのあとも、このLowe alpineを背負って旅に出た。
いちばん重かったのは
インドのリシケシでヒンディ語を習っていたとき。
辞書だの、テキストだの、何冊も買ったので
リシケシを出て次の町へ移動するとき、
バッグパックは、30キロの重さになっていた。
それを背負い、30分や1時間、宿探しで町を歩くこともあったのだから
ちょうど、旅をしながら筋トレをしているようなものだった。

しかし、重い荷物は旅の歩みを遅くする。
バッグパックが大きいから荷物も多くなるのだと、
あるとき、ベトナムのホーチミンで
わたしは60リットルのLowe alpineを売り、
その代わり、再び40リットルサイズのバッグパックを買った。
メーカーは、引き続きLowe alpine。
なんでもよかったのだけど、くすんだ水色がいいなと思ったのだ。
しかし、タイのノンカイで強盗にあったとき、
このバッグパックをナイフでざっくり切られてしまったので、
日本に帰ってから、またバッグパックを新調した。
今度は45リットルのMILLET。
グレーに水色の模様が入ったもので、とても背負いやすく、
今でも、それを愛用している。

旅の友、バッグパックはこうして何代も入れ替わった。
わたしはその間、20回近くインドへ通い、
合計で3年くらいの月日を向こうで過ごした。
はじめてインドへ出かけたのは
沢木耕太郎の「深夜特急」に影響されて旅へ出る人や、
猿岩石をまねて日本を飛び出してきた若者が多く、
「自分さがし」というコトバが流行していた頃だった。
別に、わたしは自分をさがすために旅をしていたわけじゃないし、
ただ、「行ってみたかったから」「おもしろそうだったから」
そんな理由で、旅を続けていたのだけど、

はたして、わたしは旅でいったい何を見つけたのか?

日本にいるときも、旅をしているときも、
時折、そんな疑問がわたしの心の表層に浮かんでは消えた。

これまで、旅について3冊の本を書いた。
2冊目は、レシピとエッセイという異色のスタイルなので
とりあえず置いておくことにして、
純粋に旅を見つめたのは
「スロウなアジア」と「ぎゅぎゅっとインド」の2冊になる。
「旅のことを本にしたらいい。あなたが書く文章を読みたい」、
ある人の、そのひと言がきっかけになって
2003年夏、「スロウなアジア」の出版にこぎつけた。
「ぎゅぎゅっとインド」を書いたのは2006年春だ。
書くことが楽しくて楽しくて仕方なく、
一気に書き上げた「スロウなアジア」、
旅の“光”も、裏にある“影”も、
どちらも書きたかった「ぎゅぎゅっとインド」。
正直なところ、旅の話はこの2冊だけでおしまいにして、
もう、本を書くつもりはまったくなかった。
でも、今回、縁あって本を書くことになり、
ときどき、吐きそうになりながら机にしがみついて文章を書き、
目が痛くなるほど、過去の日記やアルバムを洗いざらいあさって、
ようやく、この「インド・アフター・インド」が仕上がった。

ピカピカのバッグパックを背負い、
勇んでインドへ出かけた15年前のわたし。
あの新人バッグパッカーが、時を重ねてどんな人間になったのか。
特におもしろくもないが、つまらくもない、
おおむね、淡々と過ぎていく日本での日常と、
はちゃめちゃで、突拍子も無く、
時々、こころを激しく揺さぶられるようなインドでの日常が、
この15年間、溶け合い、せめぎあい、許し合い、ときに戦い、
“わたし”という人間を作ってきたのだと
この本を書く過程で、いやというほど思い知った。
この本は、“わたし”という人間が今、ここに生きているという
存在証明であり、
存在理由であり、
過去の軌跡であり、
そして、未来をほのかに照らす道標でもある。
そう考えると、わたしの旅についての本は全三部作、
これで、ようやく完結したみたいだ。

2012年7月、「インド・アフター・インド」刊行。
by asian_hiro | 2012-07-28 20:18 | 私の本
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