ずっと、これが見たかった。
8年前、この町に来たとき
いつも夕方になるとチベット寺へ出かけ、お坊さんの問答を見た。
二人一組でペアになり、
質問する方は手を鳴らし、足を踏み、
襲いかかるように相手へ質問を投げかける。
答える方は、地面に座り、
間髪入れずに返事をする。
その早口のやりとりがおもしろくて、
ああ、チベット語がわかったらもっと楽しいのにと思いつつ、
境内にこだまする僧侶の声を、気持ちよく聞いていた。
僧侶の声に、うるさいほどのセミが混ざる。
でも、6時15分を過ぎると、ピタリとセミは鳴きやむのだ。
あれは、いったいなぜだったんだろう。
今日、ひさしぶりに僧侶の問答を見た。
たった2組だったけれど、そのやり取りは境内に大きく響き、
雨上がりの青空へ、ぐんぐんと吸い込まれていった。