アジアとアジアの飯をこよなく愛するライターの、「旅」と「パン」と「おいしいもの」があれば幸せな毎日の記録です。
by asian_hiro
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追想
夜明け前の、まだ、空が暗い時間に吐き気と懐かしさで目が覚める。
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大学受験を数ヶ月後に控えた頃、
現代国語の先生に小論文を添削してもらった。
それまでレポートは書いたことがあっても
論文なんて、どう書けばいいのかまったくわからなかったから、
出来上がった原稿は支離滅裂で内容も散漫、
読書感想文にスーツを着せて、少しフォーマルにしたようなもので
とても読めた文章ではなかったと、今、振り返って思うのだけど、
先生から返却してもらった原稿用紙の余白には、
赤字でこんな言葉が書かれていた。
「もっと、計画的に」(「もっと」だけ、青字で強調されていた)
そして、
「あなたは、もっともっと文章が伸びるひとです。
特に、終わりの部分など将来を楽しみにさせてくれます」
どんなテーマでその小論文を書いたのか、覚えていないけれど、
たぶん、「近代化と農村」とか、そんな感じだったと思う。
わたしは、そのおじいさん先生の授業がとても好きで
当時、小林秀雄や丸谷才一などの文章を読んでいたのも
先生の影響だった。
小柄で、いつも青いスーツを着ていて、
一昔前の革命家みたいに、目尻に熱いものが漂っていた。
授業の合間に時折、「自宅に帰って夜、ひとりで日本酒を飲むのが
ひそかな楽しみなのであります」と話していたためか、
最後の授業のときには
男子生徒が何本もの一升瓶を差し入れし、
それらが教卓の上に仰々しく並んでいた。
そんな先生に、
「あなたはもっと文章が伸びるひとです」と言ってもらえたことが
それ以降、ずっとわたしの原動力になっていて、
なんとかここまで、わたしを引っ張ってくれたのだと思っている。


とんでもない吐き気とともに目覚め、
そろそろ限界だなと思った今朝、
なぜか、ふと、先生のことを懐かしく思い出した。
どうしてだろう、
その先生はとうの昔に亡くなってしまったのだけど、
先生に添削してもらった小論文は、まだ実家にあるはずだ。
とめとはらいがきれいに浮き出た先生の文字が
なんだか、今、無性に見たい。
取りに行こうか、今週末にでも。


とにかく、この憂鬱な吐き気がおさまるまで
身動きひとつせず、ふとんのなかで丸まっていたいけれど、
残念ながらそうもいかないので、
とりあえず今だけは音楽をすべて消し、暗闇のなかで目を閉じる。
最近は、右の耳で音を求め、左の耳で静寂を探していて、
こうなると、あたりに響くものはすでにオンガクではなく、
ただ、壁に吸い込まれるのを待つのみだ。


韓国の空港でお会いしたお母さん、
「いいわね、あなたにはインドという逃げ道があって」と
初対面のわたしに対し、あなたが言った言葉の意味を
昨日の夜中、わたしはようやく理解した。
「逃げ道」は崖っぷちに立って、
はじめて目の前に現れる、たったふたつの選択肢のひとつなのだ。
あっちか、それか。
だけどお母さん、あなたのお嬢さんがそうであったように、
逃げ道が用意されていると気づいた頃には
哀しいかな、もう、それを選べないことが多いみたいだ。
by asian_hiro | 2011-02-09 23:49 | 日々のこと
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