パンを食べ、かつての旅を思い出す。
「すこし、アラビアのお菓子のようです」という文章を
お店のウェブサイトで読んだからだろうか。
このパンを食べるたび、
月夜に、砂漠のど真ん中で、
日干しレンガで造られた建物の影だけが闇夜に浮かび、
遠くから太鼓に合わせて歌う声が聴こえ、
焚き火だろうか、チラチラと赤いものと
空に向けてまっすぐのぼる灰色の煙が見え、
それをお城の窓から見下ろしている
まだ幼い、けれどとても凛とした
ひとりのお姫さまの様子を想像する。
ameen's ovenのクロカント・クロワッサン。
クロワッサンに、胡桃とメープルシロップのペーストが
ぐるりと巻き込まれている。
ああ、わかった。
どうしてそんな光景を思い浮かべたのか。
この甘みに似た大好きなお菓子を
エジプトのあちこちで食べたからだ。