手を合わせ、こころを澄ます。
ひとは、なにかを願って祈るのではない。
願いごとが見えるのは、こころに迷いがない証拠。
たぶん、道に迷うから祈るのだと思う。
手に寄るしわは、祈りの数だけ深くなる。
交わり、離れ、絡み合う。
複雑なしわの模様は、迷いの果てに選びぬいた道のようだ。
飛行機のなかで、ただひたすら日記を書いた。
猛烈な速さで書いた文章を、たった一語で要約するのは簡単だ。
ただ、それに対する回答をどこからか引っぱり出すのは
雲にはしごをかけるみたいにむずかしい。
だけど、この迷いが消えればまた別の迷いが現れ、
いつでも、なにかしらの悩みごとが心に浮かぶのだとすれば
いまはまだ、時折立ちすくむことがあるとしても、
この道がやがて光のなかへ溶けるように、
手を合わせ、祈ろうと思う。