音も、においも、覚えている。
神業みたいな手さばきで、
おじさんは、ダチョウの卵を目玉焼きにした。
一目で中東系とわかる顔、かたち。
わたしより一段高くなった壇上に立ち、
どんどん集まる客のために、
次から次へと卵を鉄板の上へ落としていく。
たぶん、それはスーパーの入り口、
テキ屋みたいに簡単な店構えだ。
鉄板の上でジュージューと音を立て、
どろりとした白身の色が、みるみるうちに変わっていく。
へえ、ダチョウかあ、
そういえば、どこかの国で生卵を見たことはあっても
食べたことはなかったよなあ、
どうしよう、食べようかなあ、頼んじゃおうかなあと迷っていると
「あんた、いま、やらんでいつやるとね」って、
上から彼の声が降って来た。
夜中にそんな夢を見た。
さて、もうすぐ朝4時半。
行ってきます。