思いがけずに、出会う幸運。
どうしても欲しいピアノの楽譜がありました。
なぜ、それを探していたのかというと、
それには、いろいろな理由がありまして、
まあ、その話はここに書くことでもないので省略しますが、
とにかく今朝、わたしはその楽譜をネットで買うことができないか、
一生懸命、検索していたのでありました。
しかし、探しても探してもまったく見つかりません。
いや、見つかることは見つかるのです。
それでも、そこにあるのは「絶版」「売り切れ」のオンパレード。
「あった!」と思ったら、オークションで10,000円。
入札しようか一瞬迷いましたが、一体いくらまで値段が上がるのか、
考えただけでも怖くなったので、そのままページを閉じました。
見つからないと、ムキになって探すのがわたしの性分。
検索のキーワードを何度も変え、たくさんサイトを巡ってみても
やっぱり楽譜はありません。
その曲を弾いていたのは、いまから15年も昔のこと。
あのときの楽譜は何度か繰り返した引っ越しの末、行方不明になり、
いまは、曲の断片しか思い出すことができません。
もうだめなのかな、見つからないのかなと思っていたとき、
ふと、あるひとのピアノ曲を知りました。
とても気になったので、早速iTunesでダウンロードすることに。
それは、山のふもとの木造家屋でひばりの声を耳にしながら、
日差しが差し込む6畳の和室で焦げ茶色の丸テーブルに向かい、
のんびり手紙を書いているときにほどよい音量で聴きたいような、
そんなピアノの曲でした。
欲しいものは手に入らなかったけれど、
予想もしなかったものが手のなかに転がり込んでくる幸運は
なんてスリリングで、エキサイティングなものなのでしょう。
探していたものをあきらめたわけではないけれど、
いまは、ウェブ上に落ちている数百、数千万という音楽のなかから
この曲に出会えた幸運に感謝します。
その「感謝」は、誰に向けてのものなのか、
検索を続けた今朝のわたしに対してなのか、
それとも、曲を作ったひとに対してなのか、
あるいは15年前、あの曲を教えてくれたひとに対してなのか、
そもそも今日、曲を探すきっかけをくれたひとに対してなのか、
そんな細かいことはどうでもよく、
この文章を書きながら、
ダウンロードした音楽を何度も繰り返し聴いている
「いま」という唯一無二の、しずかな夜に感謝します。
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